北川進さんは、金属有機構造体(MOF)と呼ばれる新しい多孔性材料の研究を切り拓き、2025年にノーベル化学賞を受賞した化学者です。
「北川進 名言」という検索はまだ大きな市場になっていませんが、本人の記者会見やインタビューを調べると、研究だけでなく、仕事や人生にも重ねられる印象的な言葉が数多く見つかります。
特に北川さんが大切にしているのが、中国の思想家・荘子に由来する「無用の用」という考え方です。今は役に立たないように見えるものにも、見方を変えれば大きな価値がある。その考えは、長年「穴のある材料」を研究してきた北川さん自身の歩みとも重なります。
この記事では、京都大学、文部科学省、NEDOなどの一次・公的資料や本人インタビューを中心に、北川進さんの名言・心に響く言葉を紹介します。
北川進の名言|研究・挑戦について心に響く言葉
「新しいことにチャレンジする」
新しいことにチャレンジする、科学者として大切にしてきたことです。
2025年10月、ノーベル化学賞受賞決定後の京都大学での記者会見で語った言葉です。
北川さんは、活性炭やゼオライトとは異なる、新しい機能を持つ材料づくりを30年以上続けてきたと振り返りました。研究には「辛いこともたくさんある」としながら、それでも新しいものを作ることを楽しんできたと話しています。
結果が保証されていることを続けるのではなく、まだ誰も答えを知らないものへ向かう。その姿勢そのものが、北川さんにとって科学者であることの核なのでしょう。
京都大学「北川進 理事・副学長、高等研究院特別教授が記者会見を行いました」
「知的好奇心を大切にし、面白いことをやって欲しい」
知的好奇心を大切にし、面白いことをやって欲しい
ノーベル化学賞受賞決定の翌日、これから研究者を目指す高校生や大学生へのアドバイスとして語った言葉です。
北川さんが若い人に勧めているのは、「役に立ちそうな研究を選びなさい」ということではありません。まず自分の知的好奇心を大切にして、まだ世の中にないものを一から生み出すことです。
研究だけでなく、仕事や進路を選ぶときにも、「何が得か」だけでなく「自分は何を面白いと思うのか」を考えさせてくれる言葉です。
KyotoU Channel「2025ノーベル化学賞受賞決定から一夜明け」
北川進が大切にする「無用の用」とは?
役に立たないものも実は役に立つんだよ
北川さんが「研究を続けるうえで大事にしている言葉」として挙げているのが、荘子の「無用の用」です。
一見すると役に立たないものにも、実は大切な役割や価値がある――という考え方です。
北川さん自身、テレビ朝日のインタビューで、自分たちが研究してきた「穴のある材料」を例に説明しています。材料に何もない空間、つまり「穴」があって何の役に立つのか。しかし、その空間があるからこそ、気体を取り込んだり、分離したりする新しい機能が生まれました。
テレビ朝日「大切にしている言葉は?次世代に伝えたいことは?ノーベル化学賞・北川進氏に聞く」
「役に立つか」だけで研究を判断しない
「無用の用」は、北川さんの研究人生そのものを表している言葉でもあります。
今すぐ役立つことだけを追えば、すでに価値が分かっているものへ人が集中します。しかし、誰も価値に気づいていないものの中にこそ、新しい発見が隠れているかもしれません。
北川さんは若い研究者に対しても、「すでに先人たちが多くの研究をしてきたから、やることがない」と諦めないよう呼びかけています。
まだ価値が分からないものを見ること。違う角度から考えること。「無駄」と決めつけないこと。これは科学研究に限らず、新しいアイデアを生み出すときにも大切な考え方でしょう。
「やることがない」と諦めずチャレンジする
北川さんは、ノーベル賞受賞翌日の会見で若い世代に向けて、先人が多くの研究をしてきたからといって「やることがない」と諦めないでほしいと語っています。
あきらめず、チャレンジ精神を持って挑戦していただきたい。
科学の世界では、すでに膨大な研究成果が積み重なっています。それでも北川さんは、環境、エネルギー、生命、医療など、解決すべき問題は「山積している」と指摘します。
「もう誰かがやっている」「自分が新しくできることはない」と思ったところで止まらず、まだ見えていない問いを探す。北川さんの「無用の用」ともつながる言葉です。
「知的好奇心が原動力」
2026年のNEDOとの対談では、北川さんの研究を動かしてきたものとして「知的好奇心」が語られています。
ノーベル賞につながったMOFの研究も、最初から社会実装や大きな賞を目標に始めたわけではありません。新しい物質や現象に対する「面白い」「なぜだろう」という関心が研究を前へ進めてきました。
NEDO「『MOFは早すぎた』、その時の支援はノーベル賞の原点」
成果を出すことばかりを考えると、失敗を避けたくなります。しかし好奇心を出発点にすれば、「分からないからやってみる」という選択ができます。
北川さんの研究人生は、好奇心を長い時間持ち続けることが、結果として大きな発見につながる可能性を示しています。
チャンスは「祈るもの」ではない
ノーベル化学賞の受賞発表後、文部科学大臣から若い世代へのメッセージを求められた北川さんは、チャンスについて印象的な考えを語っています。
文部科学省によれば、北川さんはチャンスは祈るものではなく、自分を教育してくれる人や学校など、周囲の人と協働しながら作り上げていってほしいと話しました。
文部科学省「2025年ノーベル化学賞を北川進 京都大学特別教授が受賞」
「いつか運が巡ってくれば」と待つだけではなく、人と出会い、学び、環境を生かしながら、自分でチャンスが生まれる状況を作っていく。
研究者を目指す若者への言葉ですが、進学や就職、新しい仕事への挑戦にも通じる考え方です。
「辛いこともたくさんある」が、それでも研究を楽しむ
ノーベル賞受賞会見で北川さんは、30年以上の研究生活を、成功ばかりだったかのようには語っていません。
辛いこともたくさんあるのですが、実際に新しい物を作っていくこと、それを30年以上楽しんでまいりました。
長く続けるということは、ずっと楽しいということではありません。批判されることも、思うような結果が出ないこともあります。
それでも「新しい物を作る」という中心の楽しさを失わなかった。成功した瞬間だけではなく、そこへ至る長い過程そのものを楽しむ姿勢が伝わってきます。
失敗や批判も研究の一部だった
北川さんのMOF研究は、最初から高く評価されていたわけではありません。
ノーベル賞受賞後のインタビューでは、研究発表を学会で激しく批判され、「汗と涙にまみれた夜」もあったことを振り返っています。それでも研究を続け、後に世界的な研究分野へ成長しました。
新しい考えほど、最初は理解されないことがあります。批判されたことと、研究そのものに価値がないことは同じではありません。
北川さんの歩みは、失敗や反対意見に出会ったとき、それを「終わり」と決めるのではなく、もう一度確かめることの大切さを教えてくれます。
「研究なんて100%無理はありえへん」―教え子が覚えている言葉
北川さん本人の公式会見での発言とは別に、教え子が今も覚えている言葉があります。
研究なんて100%無理はありえへんから
甲南大学の髙嶋洋平教授が、北川研究室時代を振り返って紹介した言葉です。
髙嶋さんが夢のような研究テーマへ挑戦しようとした際、北川さんは「絶対やめろ」と止めるのではなく、難しいことを伝えたうえで、最後は挑戦する自由を残したといいます。
結果としてその研究は失敗したそうですが、髙嶋さんは、実際に挑戦して納得することが次につながると北川さんは考えていたのではないか、と振り返っています。
これは教え子による回想なので、本人の一次発言とは区別する必要があります。しかし、北川さんの「チャレンジ精神」を知るうえで興味深いエピソードです。
北川進の言葉に共通するもの
| テーマ | 北川進の言葉から見える考え |
|---|---|
| 好奇心 | 「役立つか」より、まず面白いと思えることを追う |
| 挑戦 | すでに研究され尽くしたと思っても、新しい問いを探す |
| 無用の用 | 価値がないように見えるものにも可能性を見つける |
| 失敗 | 失敗や批判があっても、それだけで可能性を閉じない |
| チャンス | 待つだけでなく、人や環境との協働から作り出す |
| 研究 | 結果だけでなく、新しいものを作る過程そのものを楽しむ |
こうして並べてみると、北川さんの言葉には「すぐ役立つもの」「確実に成功するもの」だけを追わない姿勢が一貫しています。
誰も価値に気づいていないものを面白がり、失敗の可能性があっても挑戦し、長い時間をかけて研究する。その積み重ねが、後にノーベル賞へつながる研究分野を生み出しました。
北川進とは?2025年ノーベル化学賞を受賞
北川進さんは京都大学の化学者で、多孔性配位高分子(PCP)・金属有機構造体(MOF)の研究を世界的に切り拓いた研究者です。
2025年には、MOFの開発に関する功績でノーベル化学賞を受賞しました。日本学術振興会によると、北川さんは新しいタイプの多孔性材料を開発し、大量の気体の取り込みや選択的なガス吸着が可能であることを世界で初めて立証しました。
日本学術振興会「北川進先生 ノーベル化学賞受賞決定にあたっての理事長メッセージ」
MOFは二酸化炭素の分離・回収、水の回収、エネルギー、環境、医療など、幅広い分野への応用が期待されています。
北川進の名言・心に響く言葉まとめ
- 北川進さんは「新しいことにチャレンジする」ことを科学者として大切にしてきた
- 若い世代には「知的好奇心を大切にし、面白いことをやって欲しい」と伝えている
- 大切にする言葉は荘子の「無用の用」で、役に立たないように見えるものの価値を重視している
- 先人が研究してきたから「やることがない」と諦めず、チャレンジすることを勧めている
- チャンスはただ祈るのではなく、人や環境と協働しながら作り上げるものだと語っている
- 研究には辛いこともありながら、新しいものを作ることを30年以上「楽しんできた」と振り返っている
- 教え子の回想には「研究なんて100%無理はありえへん」という言葉も残っている
北川進さんの言葉が教えてくれるのは、最初から「役に立つ」と分かっているものだけが価値あるものではない、ということです。
誰も注目していないものを面白いと思う。無駄に見えるものを別の角度から見る。失敗しても、新しい問いへ挑戦する。北川さんが大切にする「無用の用」は、科学研究だけでなく、自分の可能性や仕事、人生を見るときにも、少し違った景色を見せてくれる言葉なのではないでしょうか。
主な確認資料
- 京都大学「北川進 理事・副学長、高等研究院特別教授が記者会見を行いました」
- KyotoU Channel「2025ノーベル化学賞受賞決定から一夜明け」
- 文部科学省「2025年ノーベル化学賞を北川進 京都大学特別教授が受賞」
- テレビ朝日「大切にしている言葉は?次世代に伝えたいことは?ノーベル化学賞・北川進氏に聞く」
- NEDO「『MOFは早すぎた』、その時の支援はノーベル賞の原点」
- 日本学術振興会「北川進先生 ノーベル化学賞受賞決定にあたっての理事長メッセージ」
- 甲南大学「北川進研究室の舞台裏 教え子が語る研究者魂」
